新しい創傷治療
皆さんは自分やお子さんが怪我をした時どのような治療を今まで行なっていたでしょうか? キズを消毒液で毎日消毒.お風呂の時も濡らさない.ジクジクしてきたらバイキンが悪さしてきた証拠だからガーゼを当てて拭きとる.かさぶたが出来てきたら治ってきた証拠.などなど.でも今ではこれらの処置や治療法よりもっといい方法が出てきているのです.
1. キズ口を消毒しない ⇒ 2. 乾燥させない ⇒ 3.被覆材を使う
⌈キズの湿潤治療⌋です.


まずは次の写真を見てください
膝にできた比較的広くて深めな擦りキズを、被覆材を使った治療を行なって1週間程度の写真です.
かさぶたや傷の跡もほとんど残らず、完全に綺麗な皮膚が薄くですが出来上がっているのがわかると思います.その後も治療を続けることで、完全に元の皮膚に戻っていきました.被覆材を使った治療のメリットですが、傷がとにかく早く治ります.そして、傷跡もわからないほど綺麗に治りますし、処置自体には痛みは殆どありません.貼ったままではダメなこと、絆創膏よりお金がかかル等のデメリットもありますが、大切な体ですからせっかく治療するのであれば出来る限りきれいに治してあげたいですよね.
では先に述べた3つの項目について説明していきましょう.

1.キズ口は消毒しない


今までキズはしっかり消毒するように言われたと思います.しかし、傷の周りには菌(皮膚常在菌といいます)は沢山いますし、消毒薬の効果が弱くなればすぐに増えてきます.また、消毒薬は細菌も人間の細胞も区別すること無く殺しますが、細菌よりも人間の細胞のほうが消毒薬には弱いのです.つまり、消毒することは人間の治ろうとする細胞を殺していることと同じなのです.
消毒よりも大切な事は「異物を取り除くこと」です.異物には傷口に残っている木や植物の破片、血の塊、皮膚の一部などが含まれてきます.これらが残っていると感染の可能性が高くなるので、医療機関でしっかりと全て取り除くことが一番重要になります.当クリニックでは痛み止めのゼリーをつけてゆっくりと綺麗にしていきます.異物をきれいにした後は水で綺麗に洗い流して処置をしていきます.
2.乾燥させない


砂漠で人間が生きていけないように、皮膚の細胞も乾燥していると生きていくことが出来ません.傷口を乾燥させないようにしているものがジクジクしたものの正体、「滲出液」なのです.この滲出液をキズ口にとどめることで、皮膚が治るための細胞がいきいきと活動できるのです.かさぶたでもいいかと思うかもしれませんが、かさぶたはこの滲出液が固まったもので、そこから皮膚は作られて来ません.それにせっかくの滲出液が無駄になってしまいます.また、ガーゼをあてることはいいように思えますが、滲出液を吸いすぎてしまう事、キズ口にくっついてしまうために剥がすときに痛みを伴います.
3.被覆材を使用する


キズに対して被覆材を使用するとどうなるでしょう.
まず、キズ口が乾燥しません.余分な滲出液を吸い取ってちょうどいい環境にしてくれます.かさぶたも作られません.ですから、皮膚を治す細胞がその力を最大限に発揮でき、あっという間に綺麗に治っていくのです.
実際に治療を行うには注意が必要


誰もが被覆材を使って、絆創膏を貼るような感覚ですぐに手軽に処置ができるわけではありません.
被覆材を正しく使わないとかぶれやとびひが起こりますし、異物が取り切れていないと感染をすぐに起こすので、診察時の確認が非常に重要となります.
キズの状態を細かく確認して、異物は残っていないか、感染は起きていないか、このままの処置でいいか、別な被覆材を使うか、どのくらいで交換していったらよいかはある程度経験が必要になります.
異物が取り切れていないキズ、動物や人に噛まれたキズ、とびひになったキズは確実に感染症を起こしてきます.その様な場合は抗生物質を内服してもらいながら、被覆材を継続したほうがいいのか、それとも何らかの処置を行ったほうが良いのかの判断が、傷が綺麗に治るかの分かれ目になります.また、やけどでも被覆剤を使用した処置が可能です.しかし、処置の際に注意することが異なってきますので、必ず医療機関でどのような処置をしていけばよいか、どのような症状に注意が必要かのアドバイスを貰うようにしましょう.

当院ではキズの状態や治り具合、に応じて4種類程度の被覆材を使い分けていきます.その中には日本で開発されて、シンガポールではここでしか使われていない製品も含まれています

最後に、当クリニックで実際に治療した例をお示ししましょう


スポーツによって右足外側に大きくキズ出来てしまいました.ご家族は近くの薬局で勧められた消毒薬で消毒し、キズを乾燥させる粉を使って10日ほど治療を行なっていました.そしてなかなか治らないために当クリニックを受診されました.
かさぶたを剥がす際には痛みが出てくるので、キズの表面に麻酔のゼリーを塗ってすべてのかさぶたを剥がしました.通常、かさぶたの下に皮膚は多少できてきていますが治り方としては非常にゆっくりしています.このような状態で受診されてきました.ここに被覆材をあてて治療を行なっていきます.
治療を開始して2日後の写真をお示しします

すでに綺麗なピンク色の皮膚が表面にできているのがわかると思います.もちろんかさぶたもありません.この時点で自宅での処置を継続してもらい、問題があれば診察に来てもらうこととしました.
このように10日間かかっても完全に治りきらなかった大きなキズが、適切な処置をして数日被覆材をあてるだけであっという間に綺麗に治っていきます.

ケガをする機会は少ないかもしれませんが、もしケガをしたらこのサイトの内容を

思い出し、素早く綺麗に治すようにしていきましょう.